私が狩猟を始めた理由

料理人として食材の方に興味が湧き始めた。

野菜を自ら育て、魚を自ら釣り、肉を自ら獲る。それらを自分で料理し食す。自分で店をやっているうちに次第にその気持ちが大きくなり始めた。

別にアウトドアが好きな訳でもないし、自然信奉者でもない。自分で育て、獲った食材を料理して食べるというのは、私にとって一度しかない人生の幸せ度を上げる一つの要素だと結論が出ただけの話だ。

 

地方に移住して知り合った人は、私たちの経歴を聞くと、じゃあまた店をやるのね、という方向に話が進む。

まあ当然の流れだとは思うが、私たちはやりたいことがたくさんあり、〈人生のやりたいことリストの上から順にチェックを入れてゆく人生〉を目指しているので、一度やったものはもうやらないと決めている。

ただ自分たちの中だけで完結できる半自給自足スタイルを自己満足でやっているだけなので、情報発信くらいが関の山だ。

 

 

私は東京生まれ湘南育ち根暗な奴は大体友達、なのだが、都市にいると自分が生き物だという感覚が薄れていく気がしていた。別に薄れてもいいじゃんと言われればそれまでで、私はぐうの根も出ないのだが、自然豊かな場所で暮らし始めてから周りに命が溢れていることに気付き、自分もその中の一つの生命体だと実感できた。

結構簡単に命に感謝することが出来るのだ。

それが当時の私には新鮮で、なぜだか嬉しかった。……とまあオシャレなことを言ってみたが、単に私の中では都会が性に合わなかったと言うだけでもある。狩猟を続ける人は少なからず同じような感覚を持っているのではないだろうか。持ってないか、人それぞれか。

 

 

それと考え方が大きく変わったのは3.11だ。人が作り上げたものなんて自然が「あ、背中痒っ」って身じろぎしただけで簡単に崩れてしまうものだと改めて思い知らされた。

日本は災害大国だ。

何もこなけりゃそれに越したことはないが、常にいざという時のことを考えて暮らしていきたいと考えるようになった。

自然豊かな食材溢れる地で、最悪、食料は自分で調達できる。そんな状況を作っておければ安心だ。加えてソーラーパネル、薪ストーブ、雨水タンクと浄化装置がある家に住めば、もはやシェルターになる。と、まあこれは別の話だ。

 

 

都会も楽しみたい、自然も楽しみたい。なんて欲張りな奴だと自分でも呆れるが、これはもうどうしようもない。

ただ都会も田舎も両方体験した自分が出した答えは、都会はたまに遊びに行くところで住むところではない、ということだ。

逆の人もいるだろうが、それが自分の性格に合っていた。

今住んでいる場所は東京まで日帰りで行って帰ってこられる。そしてちょっと歩けば鹿や猪が溢れているエリアがたくさんある。この絶妙な位置関係が気に入ってる。文明と自然。双方をいいバランスで楽しめる人生を送りたい。

 

もう一つは料理人としてのキャリアだ。私はイタリアンの料理人だった。正直イタリアンの料理人なんて石投げれば当たるレベルでゴロゴロいる。自分のキャリアやアイデンティティーの差別化と、存在価値を上げるためにジビエ料理に精通しておきたかったのである。

イタリアンの料理人>ジビエを扱う料理人>自ら狩猟して料理もする料理人

人口を考えればこうなるはずだ。そして人口が少なくなればなるほど希少価値は高くなる。都会に住んでいたら簡単に狩猟は始められない。これからもハンター料理人が爆発的に増える可能性は少ないだろう。

さらに言えば日本の人口は減少していくことが確定している。地方の小さな町なんか若い人がほとんどいない。それに比例して狩猟免許保持者の数も減っていく。すると鹿や猪が増えて害獣被害が増加する。地域住民や行政から畑や山を守ってくれと声が上がり、そこに若い狩猟者がいればその人の存在価値は高まる。この流れは今後一層大きくなるだろう。

まだまだ市場はブルーオーシャンだと思うので挑戦する価値はあると思う。昔に比べてマネタイズ方法も増えてきた。ビジネスはしやすくなったし、今の若者はもしうまくいかなくてもプランBやプランCくらい当たり前に考えているだろうから、都市より自然が好きという若い人はぜひチャレンジしてほしい。